異国に住むこと 第6回「プチ国際化」

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Writer – ミシェル ラフェイさん / 北海道教育大学旭川校准教授

日本語で一般に「国際化」というと、意識的に外国語を覚えたり、外国に行ったり、道で外国人と話したりするようなニュアンスが含まれているような気がします。

昔は移動自体が大変なことで、一般人が頻繁に旅行し、他民族・他文化に触れ合うことが少なかったでしょう。しかし、レジャーに費やす時間ができ、交通の便がだんだんよくなり、旅行する人が増えたことによって、前述の「国際化」ができるようになりました。けれども、わたしたちが一般に体験している「国際化」はもっともっと密かなものではないかと、わたしは思っています。たぶん昔も今もそれは、無意識にちょっとした「文化を残したり、文化を拾ったりした」というような「プチ国際化」ではないかと思うのです。

お箸とフォーク・スプーン・ナイフについて考えてみましょう。この46年間(わたしの記憶の範囲)で、アメリカではお箸の使用に変化があったと感じます。子どものころ、祖父・祖母と一緒に中華料理を食べに行った記憶がありますが、彼らはそれほど好んではいなかったという記憶もあります。中華料理を食べたことがなかったし、ほとんど箸文化に触れることがないので、お箸を使うこともできませんでした。ところが、いま、父母は1ヵ月に何回か中華を食べます。日本に遊びに来たときも、かろうじてお箸を使って食事をしていました。滞在中「激やせ」しなかったということは、お箸がしっかりと使えていたという証拠でしょう。わたしの世代になると、多くの人がなんとなくお箸を使うことができ、中華も和食も食べることがあります。それと同じように、日本人が明治期以来、フォーク・スプーン・ナイフで食事をしてきたことは「プチ国際化」の現れではないかと思います。

最近、アメリカでの面白い現象に気づきました。アメリカは前から民族の “melting pot”といわれていましたが、現代は、キリスト教以外の宗教を信仰している人々が多くなってきました。このことによって、宗教の自由を保つために、アメリカの文化にある変化が生じました。子どものころには12月になると“Christmas party”がありましたが、いまは “Winter party”となり、キリスト教関係の歌が流れたり、飾りをしなくなりました。現代のアメリカの子どもたちがこの季節で楽しみにしているのは “Winter break”ですが、わたしが小学校のころ楽しみにしていたのは”Christmas break”でした。さらに、挨拶も変わりました。スーパーでバイトしている学生は、お客さんに “Merry Christmas!” と挨拶してはいけないことになっています。正しい挨拶は “Happy Holidays!”だそうです。さまざまな宗教を平等に扱おうとすることによって、知らないうちに挨拶が変わってきました。これも「プチ国際化」ではないかと思います。

日本では、 AKB48を知らない人がいないくらい人気です。インドネシアでは、JKT48というグループがすごい人気になっています。HPはここです。 だれかが意識的にJKT48を流行らせようとした、そのこと自体ももちろん国際化といえますが、あまり気がつかないところで「プチ国際化」も起こっていることでしょう。JKT48の衣装やメークを真似しているインドネシアの若者は、無意識的に日本の文化を自分たちの生活に取り入れています。

現代人は、国際化を目指して積極的に何かをしようとしています。しかし、その10倍も100倍も無意識的に、密かにわたしたちは「プチ国際化」を体験しています。単に気づいていないだけです。ちょっと時間を取って考えてみると、自分がどんな国に、どのように影響されてきているか、気づくことができると思います。気づくことこそ、国際人への第一歩。その意識を持つことで、わたしたち現代人は少しずつ国際人になりつつあります。