「できるか・できないか」じゃなく「やるか・やらないか」。

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Interview - 後藤亜弥華さん/カフェ&エステサロン運営

高校卒業後、2年近く浪人生活を送るも希望する大学に入れず、挫折。高校からニュージーランドへ留学していた妹は向こうで楽しそうにやっている。私も大学がダメだったら、海外でも行っちゃおうっかなぁ——そんな軽いノリがきっかけのロンドン留学だったと笑う後藤亜弥華さん。でも、英語もままならない状態で出かけたロンドンでの3年間は、人生を変えるくらい大きなものになった。

雪の中、半泣きになった初登校

エステティシャンの母はこの上なくアクティブ。海外のインストラクターによるエステの講義が東京であると聞けば札幌から飛んで行き、2012年秋からは6次産業化*のセミナーに半年ほど通い、さらに最近はハーブを使った商品開発に向けて網走の東京農業大学に学びのため毎月出かけている。そんな母の影響から美容の道に興味をもち、同じ海外に行くなら、きちんと目的をもって大学に行こうと思うようになった亜弥華さん。

「美容だとイギリスかフランスなんですが、大学としてあるのはイギリスだけだったんです。それで、ロンドン芸術大学のロンドン・カレッジ・オブ・ファッションで、エステティシャンとしてのテクニックと経営を学ぶことにしました」

札幌で約2年にわたって留学の準備をし、2009年1月下旬にロンドンに降り立った。その年のロンドンは何年かぶりの大雪。大学で2年間のカリキュラムを学ぶ前に、語学学校に1年通うことになっていたが、その最初の登校日は亜弥華さんにとってちょっとツライ1日になった。

「札幌ならこれくらい…という雪でも、ロンドンでは電車が停まる。そんなことも知らずに出かけたら電車が来なくて。すごくあせりました。それで2時間かけて、やっと地下鉄に乗って学校に行ったら『今日は休みだよ』って言われて(笑)。雪が降りしきるなか滑って転ぶし、ひとり半泣きになりながら帰ったのを今でも鮮明に覚えています」

*1次産業(農林水産業)にとどまらず、2次産業(加工)、3次産業(流通・販売)まで総合的に取り込み、農業の振興と活性化を図る。

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自分から動かないと何も変わらない

「向こうに行ったら何もかも自分でやらなきゃいけないんだよ」。ロンドンに行く前からそう言われていたけれど、「自分でやる」ということがどういうことか、そのときは理解できていなかったという亜弥華さん。考えてみれば、日本にいるときはあまり周りに目を配っていなかったかもしれない。それに、困ったときには両親など誰かが手をさしのべてくれるものだと無意識に思っていた。

ロンドンの地下鉄で切符すら買えず、買い方を聞くことさえできず、やっと勇気を出してやさしそうなおじさんに声をかけ、親切にしてもらえたときのホッとした気持ち。そんな日常の小さな積み重ねが自分の中の何かを変えていった。自分から働きかけること、人と関わることの大切さ、コミュニケーションで人生観やモノの感じ方が変わるということを、日々の体験から感じていった。

「あんまり先入観でモノを見なくなったかもしれないですね。感じるがままに行ってるかなぁ、今は。いずれにしても、自分がやらないと何も変わらない。誰かがしてくれるのを待ってたら一生変わらない、って思うようになりました」

大学の単位取得にはインターンが必須事項だが、インターン先を見つけるところからいっさい大学は支援してくれない。

「自分で探したエステサロンに履歴書をもって行きました。かなりの数、訪ねましたね。単位が取れないと困るので必死です。向こうの履歴書って自分のアピールポイントを書かなきゃならないんですけれど、”good communication“とかいろいろ、書きすぎかなと思うくらい書きました」

結果、ヒルトンホテルで働かせてもらうことになり、インターンが終わった後も半年くらいアルバイトすることになった。帰国後の娘の姿を見た母からは、「もともと持っていたいい面が生かせるようになったんじゃない?」と言われているという。

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畑の中の小さなトリートメントルーム

20130926_02多くのことを得たロンドンでの暮らし。同じように日本から留学し、失敗や挫折を経験しながらも夢を失わない友人たちとの出会いも大きかった、と亜弥華さんは言う。父が経営していたカフェを妹と一緒に、ロンドンで通っていたお店のイメージに変え、2013年5月「THE BEST MUMMY」としてオープンさせたが、そのお店の内装やロゴ・デザインはロンドンで同じ空気感を感じてきた彼ら友人たちにお願いしている。

お店のオープンに先駆けては、農業法人サプライクロップスも立ち上げた。視野にあるのは、農業・飲食・エステを一連で展開するトータルブランディング。カフェの2階にはもともと母がやっていて、今は亜弥華さんが引き継いでいるエステサロンもある。

開拓農家だった祖父が所有する畑のうち、まず400坪を借り、2013年春から父が中心になって無農薬の野菜づくりを始めた。目標は、5年後をめざしてハーブガーデンをつくること。自家栽培のハーブで小物などを商品化し、畑の中に小屋を建てて、お客さまと対話し向き合いながらスキンケアやリラクゼーションができるトリートメントルームをつくるのが、夢。カフェの改装とは別に描いていた贅沢なスキンケア空間の夢は、「おじいちゃんの畑」の存在でカフェと一つにつながったという。

「この話をすると『5年後なんて無理だよ』って、言われなくても雰囲気で伝わってくることがあるんですけれど、やるかどうかは私たちが決めること、決めたんだからやるんだって(笑)、そんな強い気持ちを持てるようになったのもロンドンでの経験があったからですね」

「できるか・できないか」で考えると前には進みにくい。ロンドンに行くときも「できるか・できないか」じゃなくて「やるか・やらないか」で考え、「これはやろう」と自分で決めて行った。今回も同じ。亜弥華さんはしっかりと強いまなざしで、前を向いている。

 

文/佐藤まゆり 写真/小森学

 

Information

20130926_infoTHE BEST MUMMY

大好きなイギリスと故郷・北海道のコラボレーションとして、ロンドン滞在中に味わっていたスープやサンドイッチなどイギリスの家庭料理を、自分たちの畑で栽培した野菜や北海道の野菜を使ってお出ししています。ナチュラル感のあるインテリアはロンドンのカフェのイメージ。ことこと煮込んだ具だくさんのスープをぜひお召し上がりください。

札幌市中央区北3条西17丁目2-1
TEL 011-211-8333
http://www.the-best-mummy.com/