若者よ、好きな道を進む「勇気」を持て。

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Interview - 大東 俊郎さん/元札幌北高校校長、元北海商科大学教授

高校教諭、校長、大学教授と歴任し、北海道と海外の学校を繋ぐ相互交流の数々を実現してきた大東俊郎さん。「子供たちに海外を見せたい」との想いで、単身海外へ渡り、生徒たちの海外視察をカタチにしたことも。今、大東さんは若者たちに伝えたい言葉がある。「好きな道を突き進む勇気を持ってほしい」。だが、日本と海外の教育事情を知る大東さんは、若者の勇気を後押しする環境が、国内の教育現場に十分備わっていないことを憂える。

漢文を読み、世界を知る。

大東さんと世界を繋いだのは、英語ではなく漢文だった。高校時代、学校で漢文を学び没頭。辞書を片手に、日本や中国の古典漢詩・漢文を読み解いていった。いつしか興味は日本と中国の比較に向かい、大学では研究を深めた。

探求心が、根底にあった。読みたいから調べる。分かるまで、理解できるまで読み解いていく。その繰り返しで培った「学ぶコツ」が、後に日中を越えて世界各国へ渡る素地をつくっていった。
「10代~20代、漢文を通して学ぶことをトレーニングできた。どこの国の言葉でも、文化でも、学び方は同じ。漢文が、私の人生を拡げていったと思います」と振り返る大東さん。漢文を読み、世界を知った。

大学卒業後、高校教諭や指導主事時代の中国や米国の教育視察の経験を経て北海道内の校長を務めることに。大東さんの「国際化」は、ここから加速する。
十勝地方にある広尾高校の校長時代、「生徒たちは若いうちから海外を知っておいた方が良い」と思い、北海道と連携のあるカナダ・アルバータ州に単身で渡った。11月の寒い中、アルバータ州の町をいくつかまわり、たどり着いたのがブルックスという人口1万人くらいの小さな田舎町。独学の英語で交渉し、広尾の生徒たちが訪問する交換事業を実現させた。

札幌の校長時代には、北海道高等学校PTA連合会の依頼で、父母や教諭を連れてオーストラリア・タスマニアへ訪問。メルボルン州と北海道の相互交流を深めた。教授時代は、カナダの大学で教えたが、その時からの交流は今も続く。

海外に渡る数が増えていった大東さん。日本の教育の国際化が遅れていることを思い知ったのは、ボストンで行われた第3回世界高校校長会議(ICP)に参加した時だ。
世界各国から教育関係者が1000人以上集まる中、日本からの参加者はたったの5人。北海道は大東さん1人だった。「日本の教育現場は、世界に目が向いていない」。そんな想いを噛みしめ、日本の若者たちの行く末に危機感を覚えた瞬間だった。

勇気を持つこと。それは癖になる。

学生時代に漢文を学ぶ楽しさに目覚め、世界の教育現場を調査するまでに至った大東さん。若い当時に没頭したことが、今振り返ると人生の軌跡をつくっていたことになる。

「好きな道をやり通した私には『あの時、ああしていればよかった』という後悔はないんです」と笑顔をみせる。高校生の頃に抱いた情熱を大切にしつづけたからこそ、世界を見て歩ける人へと成長していけたという。

そのような大東さんだからこそ言えるのが、「若い人たちには、好きなことをやり通す勇気を持ってほしい」というセリフ。「自分の選んだ道をふりむかず、ためらわず、ガムシャラに突き進んでいく。そのためには、何より勇気が大切だ」と指摘する。

探求、その先には何があるのだろうか。

「5年、10年とやり続けていくと思ったことが実現する。人間は、なりたいと思ったような人間になっていくものですよ」。
大東さんの笑顔が自信にあふれていた。

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国際化が進まない理由は、教員にあり。

若い時代に抱いた探求心を燃やし続けることの大切さ。しかし、大東さんは心配している。「教育の現場が、意欲ある若者の成長をバックアップする体勢ではない」という。

それが垣間見えたのが、世界高校校長会議。日本の学校の校長たちは、世界の教育についての興味を持っていないということを目の当たりにした。

「世界に意識が向いていない教育現場では、国内で通用する内容しか教えられない。同じ事象に対して、世界では別の捉え方をしているなどを教えられたら、生徒たちの興味・関心がどれくらい拡大するか」。

大東さんが言っているのは、教員がハイクオリティな研究をしなくてはいけない、というわけではない。国際情勢に関心を持ち、幅広く読書をするとともに、海外の教育関係の本にも目を向け、海外の教育現場に出かけたりすること。生徒の「知りたい」という探求心に火をつける教師であって欲しいということ。

「他の業界の人なら当然行っていることですよね。それなのに、教育に携わったとたん海外事情はシャットアウトする。さすがに、文部科学省も危機感に駆られ、今、カリキュラム改革に乗り出した」と指摘する。
そもそも、大東さんも世界高校校長会議という海外の舞台に出たからこそ、日本の現状に気がつくことができた。

「教員も世界を知って、若者の『勇気』をバックアップしてほしい」。大東さんは今、SEA国際教育研究所の講師として、次世代の若者たちに「世界を知る楽しさ」を伝えている。

 

文・写真/青山達哉(サッポロッカ)  編集/小林俊三(ブルストリート)